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Thursday, November 17, 2022

あきたの手仕事(4)大館曲げわっぱ 人と人つなぐ新商品 - 読売新聞オンライン

 湯気が立ちこめる蒸し暑い工房には、ほのかに杉の匂いが香る。秋田杉を割った薄板を80度以上の熱湯につけて柔らかくした後、円柱の型に巻き付け、手でゆっくり曲げる作業が進む。

 真剣なまなざしで取り組むのは、大館曲げわっぱ製造会社「柴田慶信商店」(大館市御成町)の伝統工芸士、柴田 昌正よしまさ さん(49)。「職人にとっては100個作るうちの1個かもしれないけど、お客さんにとっては大事な一点物。一つも手を抜くわけにはいかない」

 大館曲げわっぱが産業として確立したのは17世紀後半頃。下級武士の副業として奨励された。背景には、平行に並ぶ美しい木目を持ち、余分な水分を吸収して食品の保存に向く天然秋田杉が県北地域で多く取れたことがある。

 しかし、2013年度から原材料として長年使用されてきた天然秋田杉の供給が、資源保護を理由に停止となった。これによって、現在は他県の天然杉や人工林の杉を主に用いているが、高品質な天然秋田杉より木目が粗く、曲げ加工が難しいという。業界では人工杉などに適した製法の研究などを進め、乗り切ろうとしている。

 原材料確保の難しさに加え、コロナ禍で販売機会が減少する中、柴田さんが開発に乗り出したのは、曲げわっぱで作る「シャンパンクーラー」だ。

 コロナ禍で人と人とが交流する機会が失われていると感じながら、思い出したのはコロナ禍前の15年、アメリカの小学生に曲げわっぱの文化を伝えるために渡米した時のこと。大量の料理や、シャンパンクーラーで冷やされた酒で歓迎された。現地の人と触れ合った経験には新鮮さ、楽しさがあった。

 「いずれコロナ禍は去り、人が集ってお酒を飲んだり話をしたりできる時が来るだろう。そのときに曲げわっぱには、人と人とをつなげる役割を果たしてほしい」

 開発したシャンパンクーラーには、そんな気持ちを込めた。素材の美しさを生かした高い技術力が評価され、2021年度の第46回全国伝統的工芸品公募展で最高賞となる内閣総理大臣賞を受賞した。

 曲げわっぱは傷が付いても修理することで、再び使うことができる。使い手と作り手が協力すれば、一つの道具をずっと使い続けられる魅力がある。シャンパンクーラーだけでなく、弁当箱なども暮らしを彩る道具として身近に置いてほしいと考えている。

 「道具が親から子へ引き継がれていくように、技術を次の世代に継承していきたい」。柴田さんはそう思いを新たにしている。

(おわり。この連載は池田創、山路草太、池田航大が担当しました)

◇ 

 <大館曲げわっぱ> 薄く剥いだ木材を熱湯につけて柔らかくして曲げ、7~10日ほど乾燥させる。底板を取り付けて、サクラの樹皮で縫い止めをし、蓋を付けると出来上がる。

 平安時代の遺跡から曲げわっぱの器が発見されるなど歴史は古い。天然秋田杉を使う大館曲げわっぱは、吸湿性や抗菌作用にも優れ、弁当箱やおひつなどに利用されている。

 熱湯につけた杉材を曲げる工程を撮影しました。動画は こちら のQRコードを読み込んでください。

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